歯科ブログ
口腔癌の早期発見、早期治療の重要性(4)
2008年08月25日
3人目の患者さんのケースについてお話します。
患者さんは55歳の女性で、口腔外科外来に来院する1ヶ月前に、右下第一小臼歯、第一大臼歯相当部の右側舌縁(舌の側面)に潰瘍ができていることに気付き、約1週間そのまま様子をみていたところ、痛みが現れたため、某歯科医院を受診して、口内炎と診断されました。
局所の薬剤塗布と痛み止めの内服の治療を受けましたが、潰瘍が治らなかったため、その歯科医院を受診してから二週間後、口腔外科外来に紹介状を持って来院しました。
口腔外科外来の初診の所見では、右側舌縁に0.6x1.0CMの潰瘍が見られ、潰瘍の表面はやや白色を呈していた。
また、触診では潰瘍の周囲に軽度の硬結ができて、周囲組織との癒着は著明ではありませんでした。
頚部リンバ節の触診では、右顎下部に、大豆大のリンパ節が二つ触れましたが、周囲との癒着がありませんでした。
胸部X線撮影写真でも異常は見られませんでした。
リンパ腺の転移を伴っていない舌の初期の悪性腫瘍の疑いの臨床診断となったため、入院をして、抗癌剤の投与下、潰瘍の一部を試験切除し、病理組織検査を行ったところ、舌の扁平細胞癌であることが分かりました。
その後、全身麻酔下で、舌の部分切除を行いました。
術中の所見では、腫瘍は外見より、かなり下の組織層に浸潤していたため、予定よりかなり広範囲を切除しました。
切除した腫瘍を含めた組織の迅速冷凍病理組織検査では腫瘍は完全に切除されて、サージカルマージンも安全であることが確定できた。
しかし、、術前に触診できた二つの顎下部リンバ節の迅速冷凍病理組織検査では、顎下リンバ節の転移が認められたので、上頚部リンバ節郭清術も行いました。
術後、抗癌剤の継続投与、放射線治療もしばらく行いました。
初診から二ヶ月後、退院し、その後の外来にての観察は、再発の所見がなく、順調に経過していました。
舌癌の症例を数例担当しましたが、本症例について、特に印象深く、今も時々思い出すことは、
(1)この患者さんの場合は、かなり初期の段階でリンパの転移が起こっていました。
あまりにも早すぎて、初診時の頚部のリンパ節の触診検査でさえ発見することができませんでした。
幸いに、術中に顎下リンパ節の迅速冷凍病理組織の検査を行って、リンパ節の転移を発見できたため、頚部リンパ節郭清手術を行い、頚部の他のリンパ節への転移を予防できました。
(2)肉眼的な所見では、潰瘍の範囲は広くなく、触診でも、周囲組織との癒着が著明ではありませんでした。
しかし、術中の所見では、肉眼で見るのとは異って、腫瘍の進行がかなり早かったです。
腫瘍は表面への広がりよりも、深部への浸潤が著明でした。
この患者さんのケースの場合、 開業医の先生が早く口腔外科外来を紹介したことで患者さんの命が助かったと言えます。
(3)もしも開業医の先生が口内炎だと思い込んで、口内炎の治療として、潰瘍の表面に薬物塗布などの治療を継続していたら、あるいは、手術中に顎下部のリンパ節の迅速冷凍病理組織検査を行わずに、腫瘍だけ完全に切除して、手術を終了していたら、予後が悪く、最も不幸な結果になっていたかもしれません。
口腔領域の悪性腫瘍において、その診断の困難性、治療は早ければ早いほど予後がいいということを痛感させられたケースでした。
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