歯科ブログ

口腔癌の早期発見、早期治療の重要性(2)

2008年07月14日

早く発見できたら、大きな手術をしなくても治ると思わせられた口腔癌の一例をお話しします。

 

患者さんは61歳の男性で、右下の第一大臼歯の動揺と痛みで、某歯科診療所に診察を受けました。

歯槽膿漏と診断されて、約3週間ほど歯石除去、歯槽膿漏の治療を受けましたが、症状の改善がなかったため、同歯の保存は困難だと判定され、抜去されました。

 

しかし、その後、痛みがひかず、抜いたところも治りませんでした。

抜いた後の血液の固まりがよくないため、歯槽骨が露出して、これに伴う激痛と診断されて、約1週間、抜いたところの治療が継続されましたが、痛みがますます酷くなり、抜いたところもほとんど治っていなかったため、長崎大学歯学部口腔外科を紹介され、初診から、約一ヶ月後経過後、初めて口腔外科外来にいらっしゃいました。

 

口腔外科の外来にて、単純なX線撮影所見および抜いたところの局所所見では抜歯後の感染による下顎第一大臼歯相当部の骨髄炎の疑いと診断をしました。

局所の掻爬(患部の悪いところを除去、きれいに刷る事)、洗浄、および抗生剤の投与をしましたが、患者さんの痛みは依然治まりませんでした。

その時、初めて、骨髄炎ではなく、他の疾患も否定できないと判定、抜いたところの一部の歯肉と歯槽骨を切除、病理組織検査(顕微鏡検査)をしました。

3日後、顕微鏡検査の結果が分かり、顎骨内の扁平細胞癌でした。初診から、確定診断ができるまで、40日も過ぎました。その後、早速、顎骨のCT撮影、断層撮影、骨のシンチグランム検査(正常な細胞より、がん細胞がGA99などのアイソトープを吸収しやすい特性を利用し、癌の場所を調べる検査)を行い、ようやく下顎骨原発の扁平細胞癌(下顎骨中心癌)と診断できました。

その後、術前の抗癌剤の投与、術前の放射線治療を所定の量を照射し、病変が限局している3週間後、全身麻酔下、下顎左側半分切除、左側口底の部分切除を行いました。なお、術中の迅速冷凍病理の所見では,左側顎下部のリンパ節転移が認められたため、 左側頚部リンパ節郭清(頚のリンパ節、周囲の筋肉、血管、などの組織を含めて摘出すること、 )も行いました。癌の再発の可能性を否定し難いため、同時に顎骨の再建術をおこないませんでした。

本症例は下顎左側第一大臼歯を抜去され、治りが異常に遅いため、大学病院の口腔外科を紹介されて、40日以上経過してから、初めて確定診断できた症例でした。通常、下顎骨の中心癌(下顎骨原発の癌)の早期発見は、かなり困難だと報告されているものの、もっと早く発見できたら、がん細胞はリンパ節の転移が起こらなく、左側下顎骨の一部を切除のみで、頚部リンパ節郭清術などの体に侵襲が大きな大手術までしなくでも完治できるではないかと痛感させた一例でした。

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