歯科ブログ
術前の投薬について(2)
2007年10月29日
前回お話ししましたように、葉山歯科医院では、外科侵襲の大きい治療や手術の場合、抗菌剤(抗生物質)と鎮痛剤を治療の前に投与しています。
(1)抗菌剤(抗生物質)の投与
問診で、ペニシリン系の薬剤にアレルギーがなく、肝機能にも異常がなければ、殆どの場合は内服の合成ペニシリン製剤を投与します。
その理由は、
(A)ペニシリン製剤は、様々な種類の細菌が住み着いているお口の中で、多くの種類の細菌に対して効果を発揮します(広スペクトル抗生物質)。*
*殺菌、制菌の範囲の広い(多くの種類の細菌に効果のある)抗生物質のことです。セファロスポリン系の中のケフレックスやケフラールなど第一世代の薬もあります。今から約二十数年前には、内服(飲み薬)のペニシリンの製品が少なく、注射用のペニシリンも様々な副作用があったため、口腔感染症の治療・予防するため、第一世代のセファロスポリン系の抗生物質がよく使われていました。しかし、抗生物質の使いすぎが原因で、近年、細菌に耐性ができ、効かなくなってしまい、口腔感染の治療・予防にはあまり用いられなくなってきました。
(B)他の抗生物質と較べて、ペニシリン製剤は、服用後、短時間で、有効な血中濃度に達しやすいです(つまり、効くまでの時間が短いということです)。
また、骨の中にも入りやすく、口腔感染の治療や予防するには最も適した抗生物質と言えます。
術前の投薬について(1)
2007年10月23日
前回お話ししたように、葉山歯科医院では、治療後の感染を予防するため、比較的侵襲が大きい治療や手術をする場合、治療の後は勿論、治療の前からも予め抗菌剤(抗生物質)を投与しております。
この治療の前の投薬は、以下のような手順で行っています。
(1)局部麻酔で行う治療(ほとんどのケースが局所麻酔で行います)の場合:
治療の1時間半ほど前に、通常より量がやや少ない食事をしていただいて、歯を丁寧に磨いて、ウガイ薬でよくゆすぎ、殺菌・制菌範囲の広い抗菌剤(主にペニシリン系の薬)、非ステロイド消炎解熱鎮痛剤(痛み止め)、胃薬を一緒に飲んでいただきます。
(2)静脈内鎮静法(痛みや手術に対する不安が大きい場合に行います)で治療を行う場合:
強い鎮静・鎮痛剤および筋肉弛緩剤などを使っているため、治療の少なくとも7時間以上前から食事はしないようにしていただくことになります。
したがって、内服による治療前の抗菌剤や鎮痛剤の服用は胃に負担が大きいので、治療の直前に点滴から抗菌剤を投与します。
葉山歯科医院における抗菌剤の使用(3)
2007年10月16日
感染症にかかるかどうかは、『細菌の病原性×細菌の数』 対 『免疫力(宿主の感染の防抑能力)』の網引きです。
細菌の病原性がある程度強くても、体に侵入している細菌の数が少なかったり、患者さんの免疫力がそれを上回れば、感染は起きません。
逆に言うと、細菌の病原性が強くなくても、体に侵入している細菌の数が多かったり、患者さんの免疫力が低下している場合、感染症にかかります。
患者さんに大きな外科侵襲が加わった時、血液の中には数多くの細菌が入り込み(一時的な菌血症の状態)、体は感染しやすい状態となっています。
この状態(治療後)に抗菌剤を服用しても、抗菌剤が全身の血液に回るまでは多少の時間がかかるため、その間は患者さんの免疫力だけで細菌の感染に対抗することになります。
一方、治療(大きな外科侵襲)の前に、予め患者さんが抗菌剤を服用することによって、全身の血液中に抗菌剤が回り、細菌が体内に侵入してきてもすぐに抗菌剤が効果を発揮します。
このため、葉山歯科医院では、ある程度外科侵襲が大きい手術の場合や患者さんの免疫力が低下している場合、治療の前に抗菌剤を服用していただき、細菌による感染症を予防しております。
葉山歯科医院における抗菌剤の使用(2)
2007年10月15日
実際に抗菌剤は、葉山歯科医院ではどのように使用しているのでしょうか?
まず、口腔外科、歯周外科、インプラント治療等のお口の小手術の前後の抗菌剤の投与についてお話しします。
前回、菌血症のことをお話ししたように、お口の中の手術後は、お口に住んでいる細菌が9割以上の確率で血液の中に入り、菌血症になります。
通常、健康な方の場合、菌血症は一時的なもので、しばらく経つと、血液の中にある白血球や抗体などの防衛(免疫)機能によって、血液の中の細菌を消滅させます。
しかし、糖尿病や膠原病やエイズなどの全身疾患で免疫力が低下している場合、腎炎や心内膜炎等にかかっている場合、血液の中に入った細菌の数が多すぎる場合等には、細菌の増殖するスピードが患者さんの免疫力を超えてしまい、感染症という形で発症します。
葉山歯科医院では、外科侵襲が比較的大きい処置を行う場合(手術創が大きく深い場合)には処置の前後に、外科侵襲が比較的に少ない場合でも処置の後には、抗菌剤を投与しています。
葉山歯科医院では、初診の患者さんに必ず問診表を記入していただき、患者さんに全身疾患があるかどうかをお聞きしていますが、時々、患者さん自身が全身疾患を持っていても、症状があまりないため、病気であることを忘れていたり、知らなかったり、治療も受けていないことがあります。
最近では、このようなことが増えており、特に糖尿病の方、いわゆる’’隠れ糖尿病’’というのが注目されています。
患者さんが重篤な糖尿病にかかっていることを、患者さん自身も歯科医師も知らないまま、歯の根の感染によって、最も不幸な結果になってしまったケースも学会誌には報告されています。
葉山歯科医院における抗菌剤の使用(1)
2007年10月07日
葉山歯科医院では、抗菌剤(抗生物質、抗菌薬)は下記のような場合に使っています。
(1)口腔外科、歯周外科、インプラント手術前後、感染予防のための全身投与。(主に内服)
(2)口腔感染症を治療するための全身投与。(内服または点滴)
(3)歯周病や口腔内外の炎症の局所の投与。(局所の注入、洗浄またはトローチの使用)
(4)虫歯の穴に直接抗菌剤を詰め、虫歯の原因菌を除去する。
口腔感染症の予防と治療(2)
2007年10月01日
口腔感染症の原因や本態についてお話ししてきましたが、今回は、葉山歯科医院における口腔感染症の実際の予防・治療のお話しをします。
まず感染症の治療に使われている抗生物質などの薬についてお話しします。
第二世界大戦が終わりを迎える頃、カビが細菌の繁殖を抑えることが偶然に発見されました。
そこで、カビから細菌の繁殖を抑える薬、抗生物質の第1号である『ペニシリン』が作られました。
それから、人類と細菌の戦いは、新しい時代に入りました。
様々な抗生物質が、土やカビなどから抽出、半合成され、製品化されてきました。
細菌が原因である感染症の治療も、これらの抗生物質の出現で劇的に変化し、人類の平均寿命も飛躍的に延びました。
しかし、約20年前に、カビや土などからではなく、人工的に合成したもので、細菌に対して強い効果を持つ薬が開発され、従来の抗生物質と同じように、感染症の治療に使われるようになりました。
これらの完全に人工的に合成した薬を、従来の抗生物質と区別したため、抗菌薬と呼んでいました。
近年、抗生物質も抗菌薬も感染症に使用され、生産方法も半合成や完全合成したものもあり、種類も多くなっているため、抗生物質と抗菌薬をあわせて抗菌剤という呼び名が医療の中では一般的です。
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