歯科ブログ
口腔領域の重篤な感染症(2)
2007年09月04日
もう1人の患者さんのケースについてお話ししたいと思います。
患者さんは60歳の男性で、約4日前より、右上の第一大臼歯(奥から2番目の歯)の痛みと歯茎の腫れで、葉山歯科医院に来院しました。
30歳の時、肺結核で数週間入院治療をしたことがあったとのことです。
レントゲンとお口の中の精査で、右上の第一大臼歯の歯槽膿漏の急性発作による歯肉膿瘍と診断しました。
局所麻酔をし、歯肉膿瘍の切開排膿(膿を出すこと)を行い、また、膿がしっかり出続けるように、切開した所にゴムのドレーンを留置しました。
飲み薬として、セフェム系の抗生物質をお出ししました。
翌日、腫れがまだひいてなかったため、洗浄、ドレーンの交換をしました。
抗生物質の服用量も倍に増やして、治療を継続しました。
来院から5日目、切開部の排膿が止まっているように見えているにも関わらず、歯茎全体が貧血色をしており、出血点も多数見られました。
また、全身状態も悪く、顔色は蒼白く、微熱、全身倦怠感がひどく、呼吸も少し苦しいとのことだったため、歯肉膿瘍による全身感染の疑いで、至急、大学病院の救急部に紹介しました。
大学病院に緊急入院後、CT検査、血液、血清,生化検査、および胸部X線フイルムなどの所見で、敗血症によるDIC* と診断されました。抗生物質点滴の大量投与、血小板輸血、気管切開、呼吸器の使用などの高度な救急救命治療を行った二週間後、全身状態がかなり改善され、抜管もできました。その後、長期間挿管による発声障害がすこし認められたほか、後遺症がなく順調に回復しました。また、原因と思われた右上顎第一大臼歯は入院中に同病院の口腔外科にて抜去しました。
DIC disseminated intravascular coagulation
”播種性血管内凝固”の略語で、悪性腫瘍,白血病、敗血症などが原因で、血液凝固反応、血小板が活性化され、全身の細小血管内の微小血栓が多発し、諸臓器の循環不全、機能不全を来たす病態であります。
全身的に出血傾向、血栓形成傾向、多臓器不全(呼吸不全、腎不全、ショック、)意識障害 などの重篤な状態。
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