歯科ブログ
口腔感染症の予防と治療(1)
2007年09月26日
先日お話ししましたように、お口の中の観血処置(抜歯や手術等)の後、9割以上の場合、お口の中の細菌が血液の中に入り、一時的に菌血症になります。
ただし、通常は、血液の白血球や抗体が、このように血液の中に入り込んだ細菌を破壊することによって、重い全身的な感染症になることはありません。
しかし、
①糖尿病などの代謝性疾患、肺結核などの慢性消耗性疾患、あるいはエイズなどのような免疫機能が著明に低下している疾患の場合
②膠原病などの自己免疫疾患で、免疫機能抑制剤を服用している場合
③腎炎や心内膜炎など、臓器が元々炎症を起こしており、細菌がこのような臓器に二次的に侵入しやすくなっている場合
④仕事や徹夜などで体調を悪くした場合
等には、血液の中に入り込んだ細菌は繁殖し、感染症になります。
口腔領域の重篤な感染症(3)
2007年09月12日
口腔領域の感染症についてお話ししていましたが、偶然にも日本口腔外科学会の学会誌の7月号に口腔領域の重篤な感染症について2つ報告されていたので、以下に紹介します。
① 下の親知らずの炎症が原因で、顔面頚部蜂巣炎、縦隔炎、両側膿胸をきたし、集中治療によって、救命し得た一例です。
② 左上の第二小臼歯の根管(神経)感染に継発した歯性上顎洞炎から眼窩膿瘍を発症し、失明に至ってしまった症例です。
両方とも糖尿病などの代謝性疾患や膠原病などの免疫系疾患にかかったことのない健康な方でした。
口腔領域の重篤な感染症(2)
2007年09月04日
もう1人の患者さんのケースについてお話ししたいと思います。
患者さんは60歳の男性で、約4日前より、右上の第一大臼歯(奥から2番目の歯)の痛みと歯茎の腫れで、葉山歯科医院に来院しました。
30歳の時、肺結核で数週間入院治療をしたことがあったとのことです。
レントゲンとお口の中の精査で、右上の第一大臼歯の歯槽膿漏の急性発作による歯肉膿瘍と診断しました。
局所麻酔をし、歯肉膿瘍の切開排膿(膿を出すこと)を行い、また、膿がしっかり出続けるように、切開した所にゴムのドレーンを留置しました。
飲み薬として、セフェム系の抗生物質をお出ししました。
翌日、腫れがまだひいてなかったため、洗浄、ドレーンの交換をしました。
抗生物質の服用量も倍に増やして、治療を継続しました。
来院から5日目、切開部の排膿が止まっているように見えているにも関わらず、歯茎全体が貧血色をしており、出血点も多数見られました。
また、全身状態も悪く、顔色は蒼白く、微熱、全身倦怠感がひどく、呼吸も少し苦しいとのことだったため、歯肉膿瘍による全身感染の疑いで、至急、大学病院の救急部に紹介しました。
大学病院に緊急入院後、CT検査、血液、血清,生化検査、および胸部X線フイルムなどの所見で、敗血症によるDIC* と診断されました。抗生物質点滴の大量投与、血小板輸血、気管切開、呼吸器の使用などの高度な救急救命治療を行った二週間後、全身状態がかなり改善され、抜管もできました。その後、長期間挿管による発声障害がすこし認められたほか、後遺症がなく順調に回復しました。また、原因と思われた右上顎第一大臼歯は入院中に同病院の口腔外科にて抜去しました。
DIC disseminated intravascular coagulation
”播種性血管内凝固”の略語で、悪性腫瘍,白血病、敗血症などが原因で、血液凝固反応、血小板が活性化され、全身の細小血管内の微小血栓が多発し、諸臓器の循環不全、機能不全を来たす病態であります。
全身的に出血傾向、血栓形成傾向、多臓器不全(呼吸不全、腎不全、ショック、)意識障害 などの重篤な状態。
菌血症について
2007年09月03日
口腔領域の感染予防のお話しをする前に、いくつか関連していることを先にご説明したいと思います。
(1) 今までお話ししてきたように、お口の中の細菌の生態環境は非常に複雑で、細菌の種類、数も非常に多いため、歯科治療において、小さな手術や、簡単な抜歯でも、治療の直後は、9割以上のケースで細菌が血液の中に入り、菌血症になっています(100%という説もあります)。
通常の場合、菌血症は一過性のもので、しばらく経つと血液の中にある白血球や抗体などの防衛(免疫)機能によって、血中の細菌を消滅させます。
しかし、糖尿病や膠原病やエイズなどの全身疾患で免疫力が低下している場合、あるいは腎炎や心内膜炎にかかっている患者さんの場合、血中の細菌の数が多すぎる場合等には、細菌の増殖するスピードが患者さんの免疫力を超えてしまい、感染症という形で発症します。
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