歯科ブログ
口腔領域の重篤な感染症(1)
2007年08月21日
大学病院(長崎大学歯学部口腔外科)の勤務医時代から、葉山歯科医院を開業し診療してきた中で、重篤な口腔領域の感染症の治療を数十例行ってきましたが、そのうちの2症例については特に印象に残ってます。
今回はその症例の1つをお話ししたいと思います。
患者さんは中年の男性の方で、来院の二週間前、右下の第二大臼歯(親知らずの1つ手前の奥歯)頬側(ほっぺた側)歯肉(歯茎)の腫れと疼痛で他の歯科医院に行き、歯の根っこの神経の治療(根管治療)および歯肉の切開排膿(膿を出すこと)をして 、症状が軽減ていました。
しかし、症状が軽くなったためか、出張先の仕事も忙しかったのせいか患者さんは、その後歯科医院に通わず、また出された抗生物質もほとんど飲みませんでした。
一週間後、患者さんの左側の頬部(ほっぺた)が腫れて、倦怠感、発熱などの全身症状も出てしまったため、その歯科医院に再度行き、症状が重篤だったため、そこで大学病院の口腔外科を紹介されました。
大学病院来院時、開口障害が著明(お口があまり開けられない状態)であったため、お口の中の精査はあまりできませんでした。
しかし、レントゲン写真では左下の第二大臼歯に大きな虫歯の穴があり、歯根の先端に炎症(根尖病巣:レントゲン写真では黒い影に見えます)もみられました。
また、左の頬部から顎下部(アゴと首の境目あたり)にかけて、大きく腫れていて、発熱、脱水状態、倦怠感などの全身症状も伴っていました。
左下の第二大臼歯の感染による左側顎下部膿瘍の診断のもとで、緊急入院後、局部麻酔下、口腔外の切開排膿(お口の外側の皮膚から切開して、お口の深部に溜まっている膿を出すこと)を行いましたが、症状の改善があまりなかったため、点滴の抗生物質をかえて、膿がノドの方に落ちていかないように、口腔外再切開を行いました。
また、開口器を使い、強制開口させて、お口の中に膿を出すための切開を加えました。
その後、膿の細菌培養検査を行い、原因菌を特定して、この原因菌に効く抗生物質を点滴で大量投与しました。
また、切開部からもこの抗生物質の溶液で、直接膿の溜まっているところを頻繁に洗浄していました。
しかし、このような処置を行ったにも関わらず、全身状態が悪くなり、呼吸困難も軽度に見られたため、膿が咽喉部や頚部の筋肉群の隙間まで流れ込んでしまった可能性が考えられました。
そこで、左側頚部(首の左側)、左鎖骨上部(左の鎖骨の上)にも切開排膿を行い、膿がしっかり出るように管をつけました。
しかし、このような広範囲にわたる切開排膿、大量の抗生物質の投与、全身管理を行なったにも関わらず、全身状態が改善されず、呼吸困難も徐々に著明となり、胸部レントゲン写真、CT所見でも縦隔の膿瘍が疑われたので、同大学の医学部内科、感染科に共同治療していただきました。
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