歯科ブログ
口腔外傷についてのまとめ
2007年07月31日
口腔外傷について、お話しをしてきましたが、皆様のご参考になったでしょうか?
今回は今までの口腔外傷のお話しについて重要な点をまとめます:
(1) お口の中には細菌の種類が多く、生態環境も非常に複雑であるため、お口の傷は細菌に汚染されている場合がほとんどで、感染することが多いです。 治療は、まず徹底的な傷の洗浄・消毒が必要なので、洗浄・消毒、縫合などの対応がしっかりできる病院で治療を受けることが重要です。
(2) お口の中や顎、顔面は骨の数が多く、構造も複雑であるため、受傷直後、通常のレンドゲン検査では骨の異常を発見できない場合があります。顎、顔面の骨折では、しっかりとした治療を受けなければ、顔や咬み合わせの変形などの後遺症が残ることがあります。
(3) 歯の外傷の場合、近年の歯科医療の著しい進歩で、グラグラしている歯でも歯科接着材料を用いて一時的な固定の治療をすれば、ほとんど治ります。また、歯が完全に抜けても、抜けた歯を早いうちに冷たい牛乳や、塩水の中に入れ、早く固定などの治療を受ければ、根管治療(歯の神経を取る治療)が必要ですが、歯の保存はほとんどできます。
(4) 顎顔面の複雑な骨折または重篤な外傷で、出血がひどく、呼吸困難、血圧降下、意識障害などの症状を伴う場合、救急病院で、まず呼吸、血圧の確保、出血のコントロールを優先的に行います。その後、病院によって少し違うかもしれませんが、通常、下顎の骨折、歯の外傷、口腔粘膜の外傷は口腔外科医(歯科医師)が治療します。鼻腔、副鼻腔、眼球、頭蓋骨まで波及している上顎の複雑な骨折や顔面の骨折の場合は、医科の耳鼻咽喉科m眼科、脳神経外科、顎顔面口腔外科が治療、または治療チームを組んで共同治療を行います。神経、血管の吻合の場合、審美的な観点から傷痕やケロイドを残さないように、形成外科専門医の協力も必要となります。
歯の外傷の治療(3)
2007年07月26日
外傷で歯が抜けてしまった場合の再植の具体的な治療方法のお話しをします。
(1) 抜けた歯の洗浄:再植する前に、お口の中にある傷、特に歯槽骨(歯が生えていた場所)を十分に洗浄・消毒します。傷の洗浄・処置をしている間に、抜けた歯は特別な保存液の中に入れ、洗浄と一時保存をします。
(2) 歯を再植後、3~5週間固定を行う必要があります。外傷で抜けずにグラグラの歯の固定方法とは少し違い、強力な固定が必要なため、抜けた歯の固定は通常金属ワイヤーを使って行います。レジン系接着剤と併用することも多いです。
(3) 抜けた歯の歯髄(歯の神経のこと、詳細はこちら)の血管、リンパ管、神経が断裂しているため、うまく固定をしても、歯根膜と違い、これらの組織は再生しません。このため、固定している間に、または固定が終わった後、歯髄を取り(抜髄:通常神経を抜くと言います)、根管治療の必要もあります。
歯根膜の重要性
2007年07月23日
前回、歯が完全に抜けても絶対に捨てないこと、また冷たい牛乳や塩水の中に入れてできるだけ早く受診することのお話しをしました。
これは、抜けた歯を乾燥させないためだけではなく、歯根の外にある膜(歯根膜)を保護するためです。
歯根膜は、歯と歯を支える骨(歯槽骨)をつなぐ靭帯のような部分で、歯が抜けたときには、歯根の周りにくっついた歯茎の一部や血液のように見えます。
この歯根膜の一部の細胞は、歯が抜けても、まだ生きていて、再生能力を持っています。
抜けた歯を再植する場合、歯根膜の細胞の再生や修復状態によって治り具合がかなり違ってきます。
歯が抜けてしまった後、牛乳や塩水の中にすぐに入れなければ、歯根膜が脱水状態に陥って、細胞の再生力を失ってしまいます。
また抜けた歯をたくさん触ってしまったり、落としたりすると、歯根膜に傷を付けてしまい、再植しても、うまく治らないことがあります。
歯の外傷の治療(2)
2007年07月18日
歯の外傷のお話しを続けます。
(1)歯が抜けてはいないが、グラグラしている状態の治療:歯自体が折れてグラグラしていることはほとんどなく、大抵の場合、歯が抜けかけてグラグラしている状態のことの方が多いです。(歯はとても硬いので、歯自体が折れるよりも、歯と骨をつなぐ靭帯がちぎれてしまうことの方が多いからです)
このようにグラグラしている歯の治療は、まず歯を本来の位置まで戻した後、隣の歯とくっつけて、3~5週間の固定を行います。
固定してから数日後、落ち着いた時期に、歯の神経が生きているかどうかを調べ、もしもその歯の神経が生きていない場合は、その歯の神経を取ります。 但し、固定している間に、外傷による歯の内出血が見られた場合、歯の変色を防ぐため、早期に神経*を取る必要があります。
一般的に、歯根がまだできあがっていない若い人の歯については、神経の損傷に対して強いと言われています。 この歯根がまだできあがっていない歯は、神経の穴が大きいため、中の血管やリンパ管なども太く、衝撃を受けても簡単に血管やリンパ管の断裂が起こりません。また、乳歯も、歯根ができあがっていない歯と同様に神経の穴が大きいため、神経が損傷しにくいと言われています。
近年歯科用接着レジン(歯をくっつけるためのプラスチック製の接着剤)の性能がかなりよくなり、歯の固定にはほとんどこれらの材料を使っています。金属ワイヤなどを使用する必要がないため、審美的に優れており、違和感もあまりありません。
但し、歯槽骨の骨折など重篤な症例では固定力がより強い金属ワイヤーや固定装置の使用が必要な場合があります。
*歯の神経:歯の中に空洞があります。この空洞(歯髄腔、根管などと呼ばれています)の中に、血管、リンバ管、神経、結合組織から構成されている歯髄が入っています。つまり、普段”歯の神経”と呼ばれているものは、”歯髄”なのです。虫歯の進行や歯槽膿漏の波及などで、歯髄の近くまで組織の破壊が進行すると、痛みなどの症状が出ます。この場合、歯髄を取り、治療することが必要です。昔から、この歯髄を取り除く(抜髄)ことについて、”‘神経を抜く”という言葉が使われていますが、実際、治療の時に取るのは、神経だけではありません。
歯の外傷の治療(1)
2007年07月17日
歯の外傷が起こった場合、歯科医院に来院される前に、注意すべき事がいくつかあります。
(1)歯が抜けてはいないが、グラグラしている場合: ほどんどの場合、出血を伴っていることが多いため、まず、冷たい塩水もしくは水で、ゆっくりうがいをして下さい。そうすることによって、傷をきれいにできて、出血も抑えることができます。また、歯がとてもグラグラしている場合であっても、手や舌で触ったり、抜いたりしないように気を付けましょう。
(2)歯が完全に抜けてしまった場合: まず、抜けた歯は絶対に捨てないで下さい。そして、抜けた歯は、抜けてからなるべく早いうちに冷たい牛乳の中に入れて、なるべく早く来院すれば、再植による成功率がかなり高くなります。もし手元に牛乳がなくても、近くのコンビニ等で手に入れることができると思いますが、万が一、牛乳が手に入らない場合は、冷たい塩水(生理食塩水)で代用しても構いません。塩水の濃度は、1リットル(1キログラム)の水に対して9グラムの食塩を入れるのが理想ですが、作った塩水をなめて、ややしょっぱい程度の塩水でも構いません。また、牛乳も塩水もない場合は、お口の中に抜けた歯を入れて来院されるのも一つの手段ではあります。
いずれにしても、1分でも早く来院されれば、その分治りが良いので、受傷したらなるべく早く来院して下さい。
歯の外傷について
2007年07月13日
前回まで、お口の軟組織、顎骨、顔面骨の外傷について、お話ししてきました。
これからお口の外傷の中でもっとも多く見られる歯の外傷についてお話しします。
歯の外傷について、次のような特徴が挙げられています。
(1)受傷時に、上の前歯が一番初めに当たることが多いため、上の前歯に多くみられます。
(2)乳歯の歯根が短いため、永久歯(成人の歯)より乳歯の方が抜けてしまうことが多いです。
(3)歯は、弾力のある周りの歯根膜や歯槽骨に守られているため、受傷時に、よほど強い衝突などで、口唇や歯肉も同時に裂傷にならなければ、簡単に抜けることはありません。但し、部分脱臼(抜けかけてしまっている状態)や歯の一部だけ破損していることは多いです。
(4)受傷後、早く治療をすればするほど、治る確率が高いです。
顎骨骨折の早期治療の重要性
2007年07月09日
前回の患者さんのその後について今回はお話しします。
葉山歯科医院で、パントモX線撮影検査の結果、左側の顎関節頚部骨折、骨体部骨折が認められました。顎の固定、場合によって、手術が必要であるため、歯科大学の口腔外科を紹介しました。
歯科大学の口腔外科にて、再詳細検査をしたところ、受傷から処置までの時間がかなり経っており、通常の顎間固定*だけでは、本来の咬み合わせに戻すことができないと診断されたため、手術をすることになりました。
この患者さんの場合、骨折の状態があまりひどくなかったため、早めに治療をすれば、顎間固定*だけで、折れて移動してしまった骨片を元に戻すことによって、咬合も回復させることができたはずです。
体の他の部位の骨折と同じように、早めの治療をせずに時間が経ち過ぎてしまうと、折れた骨片が別の場所のままの状態で治ってしまうか、治らないままで偽関節が形成されてしまうかになってしまいます。
その結果、このような場合には機能障害が起こってしまいます。
顎骨で機能障害が起こった場合、咬み合わせが変わってしまったり、顔貌が変形する等の状態になってしまいます。
*顎間固定
顎の骨が折れた時、顎の手術後、金属等のワイヤーや装置を用いて、上の顎と下の顎を固定する治療方法。
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